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花冷え

勝手に森博嗣作品をおすすめする記事

語りたかったからあれこれ長く書いているけれど、「◆」マークの太字部分のみ読めば、あとは読み飛ばして大丈夫なはず。

以下のおすすめは、当たり前だけど個人ブログなので私個人の意見です。あと、回し者とかでもないです。ただ、森作品を普通の人よりたくさん読んでいる(と自負している)ので、おすすめの仕方は間違っていない、はず。

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森博嗣作品を読んだことない人はまず『すべてがFになる』が理系ミステリの入り口としておすすめ

森博嗣といえば理系ミステリ。理系ミステリってどんなの?というわけで、本当は入り口なんて何でも良いんですが、S&Mシリーズ(全10巻)の一応1巻目("一応”の意味は後述)を入り口としておすすめしています。この作品が気に入れば、他のどのミステリを読んでも気に入ること間違いなし。むしろ、このS&Mシリーズはぜひとも最終巻まで読んでほしい。最終巻分厚いけど、分厚いだけある壮大なトリックと衝撃。無駄は一切ないです。読み終わった後の喪失感も半端ない。
なぜ『すべてがFになる』が"一応"1巻目かという話ですが、実はこの作品は時系列的には4巻目(気づかなかったけど…)。でも発売は一番最初。作者曰く、どこから読んでも良いそうで。本に読む順番はないらしい。確かにね。でもトリックの面白さもスピード感も含めてすべてが〜は魅力いっぱいなのでまずこれ読んでほしい!


◆理系ミステリ以外なら『スカイ・クロラ』シリーズと『ヴォイド・シェイパ』シリーズおすすめ

スカイ・クロラ』シリーズは本編5巻+短編集1巻。
前者はパイロットの物語。でも世界観は今の世界とは少し違って、「人々が戦争の間違いに気づき恒久平和が実現した世界で、なお人々が平和を実感するためにショーとしての戦争を創り出した世界」。なんだけど、あからさまな社会的な問いかけとかは一切ない。「戦争」という言葉が象徴するような暗い世界ではなくむしろ心を打つような青空と飛行機のエンジン音が思い浮かぶ。世界観に潜む暗い影はともかく、パイロットたちの自由な飛行とか思考にフォーカスされているから純粋に「なんだか綺麗な話だな〜〜!」って読める。深堀するとやばいけど。「キルドレ」という存在とか。でも高校二年生の私はこの作品が、抜け出せない森博嗣ワールドへの入り口となりました。全5巻の読み順は、刊行順と時系列順がバラバラなのですが、やっぱり時系列順が良いと思う。最初の『ナ・バ・テア』(None But Air)から読むのおすすめ。『スカイ・クロラ』の英語表記はThe Sky Crawlers、空を這う者達。
ちなみに押井守監督の映画(アニメーション)版もあるよ!あれはファンとしても素晴らしかったと思います…ただひたすらに綺麗な世界を忠実に再現してくださった。そしてぎゅーっと物悲しくなる。加瀬亮さんが主人公の声優さんだったんですけど、最後の主人公の呟きは今でも忘れられない。人間ってどうしていつも同じ毎日じゃだめなのか。
ヴォイド・シェイパ』シリーズは本編5巻。
すごくおすすめ。大好きな本。以前も紹介したことがありましたが、主人公の侍が旅をする話です。でも時代小説でもないし、昔の用語とかもそこまで出てこないのでそういう意味での読解は易しい。戦うシーンもあるけど、スカイ・クロラシリーズ同様にスピード感と迫力がある。文章でここまで表現できるんだね…。迫力があるって言っても、ダイナミックな表現が使われているという意味ではなくて、むしろ剣術という武道の静謐さとか一瞬一瞬の静寂みたいなものが詰まっていて、達人の技を目の当たりにした、みたいな静かな驚きが残る感じ。たぶんついでに『武士道』とか読みたくなるやつ。個人的な経験を踏まえると、悩みがあってそれで頭がいっぱいになってる人とか集中できない人に強くおすすめしたい。スポーツはそういうときにとても良いんだけど、この本を読んでも同じ効果が得られる(と思っている)。


◆notシリーズ物で文学っぽさがある比較的最近の小説は『イデアの影』

これ、ちょっと驚きました。やっぱり骨子は森さんだなって感じなんですけど、文章がとても文学寄りというか。理系ミステリにあったような「無駄を削ぎ落とした文章」の質はそのままに、でも心揺さぶられるような言葉があったり。一部抜粋(引用)すると、「暗く打ち拉がれた心には、傷のついたレンズみたいに、伝わらないものが潜んでいるよ」っていう台詞とか。
あと他の作品で雰囲気似てたなと思うのは、『神様が殺してくれる』。こちらはミステリ要素が強めだけど、系統は一緒な気がする。


◆エッセイとかもあるよ、『100の講義』シリーズとか『クリーム』シリーズとか

ほぼ全部読んだ。この本の書かれ方にはルールがあって、タイトルと見開き1ページでひとつのテーマが終わること。だから電車とかで読むのに向いてるかも。ただ、数々の森作品を読んでいるとやはり一人の人から発せられる言葉なので、これ聞いたことあるな!とか似たようなことそういえば言ってたな!というのが多い。一貫しているとも言えるし意見が爽快なので読むけれど、飽きたら他のシリーズでも良いと思う。ちなみにクリームシリーズはとても可愛らしいデザイン。名前も可愛い。


森博嗣作品は私の視野を広げてくれる

おすすめじゃなくて単なるまとめみたいなもの。サブタイトル通り。生きづらいなとか何かもやもやするなとか。人生嫌だな、疲れたな。なんて思うときに森作品を摂取すると、そう思ってることがばからしくなってくる。客観的に物を見ることに慣れてくるのかな。今まで生きてきて「これは重要だ!」と思っていたことが、そうでもなかったんだなと気づくきっかけになる。理系ミステリって言うけど、舞台がサイエンスな世界だからという理由ばかりではなく、こういう物の捉え方にもあると思う。サイエンスな世界はこういう視点が要求されるから当然といえば当然なんだけど。



以上。そして語りたくなったので、以下はちょっと作品読んだことある人向け?のその他の作品の紹介。


◆その他理系ミステリはVシリーズ、Gシリーズ、Xシリーズ

Vシリーズの紅子さんがすき。こんな風に生きてみたいと思う。練ちゃんもしこちゃんも良い。登場人物が一段と濃い気がする。Gシリーズは萌絵ちゃんも時々出てくる。最近クライマックス感があってやばい。本当にやばい。今までシリーズ読んできた人にとっては色々とびっくりなことが明かされていたりと、本編のミステリ以外の部分でも楽しめる。Xシリーズは他シリーズに比べてやや別シリーズ感ある。というのも、他に比べてこの作品でしか登場していない人物が多いんじゃないかと。数えてないから分からないし、私が気づいていなかったら数えようもない話なんだが。ちなみに真賀田四季の影はほぼすべてのシリーズでちらつくので、一度のめり込んだら帰ってこれないです。いってらっしゃいませ。


真賀田四季が気になったら『四季』シリーズもあるよ

スピンオフというのかな。真賀田四季の人類を超越した能力が見られます。が、最初の『春』は難解すぎて未だによく分からない。考察サイトとか普段読まないんですが、こればりは読まずにはいられなかった。


◆個人的にどう分類したらよいか分からない百年シリーズとWシリーズ

ミステリ?かなあ。でも他の作品に比べたら密室殺人!警察!とかいう感じじゃない。でも人は死にます。
こちらも真賀田四季の影があるので他と同じような感じだと思うんだけど、世界観が違う。両方とも確かS&Mシリーズとかから100年後とかの世界だった気がする。百年シリーズは実は最終巻未読です…。自分的にはなんだか重めでぐぬぬ…という感じなのですが、小難しい話とか苦手と言っていた友達が百年シリーズを気に入って読んでいるので人の感じ方は分からない。Wシリーズは自分の中で今とても熱い。簡単に言うとAIとかの話。生きるとか死ぬとかいう概念がなくなるし、新しい研究論文を読んでいるような楽しさです(伝わってほしい)。


◆短編集は長編読んでからのほうが楽しいと思う

短編も色々あるので一概には言えませんが、シリーズで出てきた登場人物のスピンオフ的なのがたくさんあるので、シリーズを知っておいたほうがより楽しめるという意味。もちろんいきなり読んでも良いと思います。


◆MシリーズとZシリーズは未読です

未読なんです…サブタイトル太字にした意味…。全然知らないので読んだ方いらっしゃったらむしろご教授いただきたい。


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おわりー!びっくり、2時間費やした。